■パントマイムについて

パントマイムと聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

白塗りの人がやってる壁?
道端でやってるロボット?

そう、それもパントマイムの一部です。でも実際は「壁」と「ロボット」だけではなく、なかなか奥の深い世界なのです。パントマイムなんか知らないよと思っている方だって、知らないうちにパントマイムの世界をかいま見ていることは案外多いのです。

たとえば、もうブームは完全に過ぎてしまいましたが、「ミスター・ビーン」を覚えていますか? 主役のミスター・ビーンはほとんど言葉をしゃべらないのに、話はどんどん進んでいきます。とてもパントマイム性の強いコメディです。
あるいは、ずいぶん古い話になりますが、マイケル・ジャクソンのムーン・ウォークはご存じでしょうか? あの動きはパントマイムの歩き方のテクニックから派生したものです。その原形は、パントマイム役者を描いた第二次世界大戦当時のフランス映画『天井桟敷の人々』ですでに演じられています。
映画と言えば、チャップリンやバスター・キートンの出演していたような無声映画も、パントマイムの一種ですね。

一方、映画やテレビではなく、マルセル・マルソー(有名なパントマイム役者です)みたいに舞台で作品を演じるパントマイムをご存知の方も多いでしょう。そこで演じられる作品は、「壁」のような技術を見せるだけでなく、舞台に一つの世界を作り出しています。

たとえば、マルセル・マルソーに「青年・壮年・老年・死」という作品があります。

舞台中央で人間がゆっくり歩いています。最初は若々しく胸を張って歩いている姿が、歩みを進めるにつれてゆっくりと肩が落ち、いつのまにか歩幅も小さくなり、やがては腰が曲がり、最後には歩みが止まる・・・。

言葉にすると非常にシンプルになってしまうのですが、短い時間の間に人生を描いてしまう作品です。

パントマイムはただのテクニックだけではなく、自分の体だけで、一つの世界を作り出すことさえできる「表現手段」なのです。

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